こんにちは。アニメも大好きトライアスリートのチバナケイです。
今日は、スキル上達において、同じ事の繰り返し(反復練習)は
むしろ、効率が悪いですよ、というお話です。
「再統合」で脳は活性化
スポーツや演奏など、
技術習得を必要とする物事において、
繰り返し練習の重要性がずっと信じられてきました。
しかし、最近の脳科学の研究において、
同じ事の反復練習は効率が悪いことが示唆されています。
(Nicholas F. Wymbs、Amy J. Bastian、Pablo A. Celnik ,2016)
→https://www.cell.com/current-biology/fulltext/S0960-9822(15)01514-6
研究では反復練習と時間のバリエーションを8つに分けて、
どれくらいスキルが身につくかを調べています。
詳細は論文のサイトを見てもらえば良いので
ここではザックリ行きます。
まず、スキル「A」と、内容を少しだけ変えたスキル「A’」があります。
このスキル練習30回×4セットを1セッションとして、時間を空け3セッション行います。
第1セッション→第2セッション(6時間後)→第3セッション(24時間後)
として、
A-A-Aのグループ・・・①
A-A’-Aのグループ・・・②
に分けます。
それぞれのグループの
第1セッションの最終セットと、第3セッションの最初のセットのスキルを比較すると、
②のグループが①のグループに比べて優位にスキル向上が見られました。
つまり、
反復練習のバリエーションを少し変えるだけで
上達が早まる可能性があるということです。
これは脳内で技能学習の「再統合」(reconsolidation)が行われるのが原因です。
どういうことかというと、
同じ反復練習だと、その技術は、体(脳)にとって
当たり前の技術になっていきます。
良くも悪くも「朝飯前」状態になるのです。
考えなくても勝手に体が動く感じでしょうか。
しかし、ここに少しの変化を加え、
「あれ?いつもと違うぞ」という感覚を脳に植え付けると、
それが刺激となります。
脳内のデータベースを検索して、一致するものがないので、
新しい情報を書き換え再統合し、安定化しようとします。
これによりスキルがアップデートされていきます。
脳内で情報を上書き保存するんですね。
ただし注意点もある
同じ事の繰り返しよりも、少し変化させたほうが上手くなる、
ということを上述したのですが、
注意が必要な点もあります。
この研究の中で、別の試行として、
第1セッションと第2セッションの感覚を30分しか取らなかった場合は、
たとえ、A-A’-A練習であっても、
さほど技能アップに繋がらなかったというデータもあります。
これは、練習した内容が脳内に定着するのには
ある程度の時間が必要であることを示しています。
したがって、技能習得には適切な練習間隔があることを念頭に置く必要があるのです。
以前、当ブログでもお話した、
集中学習よりも、分散学習のほうが習得が早いということに通じていますね。
[関連記事]
→【謹賀新年】失敗しない!確実にレベルアップできる目標の立て方とは【ダイエット・スポーツ・勉強】
技能習得の度合いは
バリエーションを加えるのがタントツで良いのですが、
単純な繰り返しであっても、わずかな上達は見られました。
最もダメなのが、練習をしないことです。
研究では、第2セッションで全く何もしないグループのデータもありますが、
第1セッションから第3セッションで上達していないどころか、
むしろヘタになっています。
つまり、練習と練習の間隔が長すぎるのもまた、良くないということです。
応用編
では、実際の練習ではどうしたらよいのでしょうか。
1つの例ですが、
私は、3台のバイクを持っています。
今まで、ライディングポジションにこだわって
サドルやハンドルの位置など、
ミリ単位で3台とも同じポジションを出すことにこだわっていました。
しかし、研究結果から言えば、むしろポジションにわずかな変化を持たせたほうが
ペダリングやハンドリングのスキル向上に繋がるということです。
練習では、少し変化を持たせたいくつかのポジションでも乗ります。
「いつもと違う」という感覚から、
脳が活性化し、それに対応しようと、再統合が起こります。
同じコースでタイムを取ったりする中で
いちばん合っているポジションを「決戦用ポジション」とします。
などなど。
テニスやバドミントンで
ラケットの重さやガットの張力を少し変えてみたり、
球技ではボールのメーカーや、
空気圧などを少し変化させたり、
スポーツ以外でも、音楽や、勉強などにも応用できるでしょう。
ポイントは脳に「安定感」を感じさせないことです。
常に脳を少し慌てさせておくのが良いでしょう。
まとめ
●同じ事の反復練習はダメではないが効率が悪い。
●同じ事の繰り返しで脳が慣れてしまうから。
●脳を常に活性化させることがスキルアップの秘訣。
●そのためには、反復練習に少し変化を持たせる。
●スポーツ、音楽、勉強に応用できる。
追記2019-05-15:実践
私が所有する3台のバイクのセッティングですが、
以前はミリ単位で同じにすることにこだわっていましたが、
最近は、それほどシビアになりません。
少しずつセッティングを変えた自転車で、
一台に偏らないよう、ローテーションで乗っています。
最初は、他人のバイクを借りたときのような違和感がありました。
ブレーキングの感覚や、コーナリングのクイックさなどが
3台とも違うのですが、最近では、無意識にそれぞれのバイクの特性に合わせて乗れるようになっています。
ランニングにおけるシューズの違いなどでも応用が利きます。
皆さんにも是非やっていただきたい方法です。
今回は以上です!
はちゃの!