こんにちは。チバナです。
今日は新潟県Nさんから質問をいただきました。
「今年からトライアスロンを始めました。
以前から乗っていたロードバイクに
ディープホイールとDHバーを取り付け、
見た目はかっこよくなったんですが、
乗ってみると、前傾がきつすぎるのか
呼吸が苦しいです。
セッティングが間違っているんでしょうか。」
ご質問ありがとうございます。
Nさんはことしトライアスロンデビューだったようです。
充実したシーズンだったようで、
来年に向けて燃えている、とのことでした。
ライディングポジションについて
ドラフティングが禁止されているトライアスロンでは、
ロングディスタンスの場合は何時間も単独走行をしなくてはなりません。
そのため、空気抵抗を削減するのは必須の課題です。
バイクで走行している際の空気抵抗のほとんど(80%くらい)は
ライダーの体が受ける空気抵抗です。
残りの20%を機材の空気抵抗。
なので、ライダーはなるべく体勢を低くし、
深い前傾姿勢を取って空気抵抗を減らす努力をします。
DHバーを使うことで、
低い体勢で、且つ、体の幅を狭めて
空気抵抗を減らすことが可能になります。
ロードバイクの限界
前屈みで深い体勢を取ろうとしたときに、
ロードバイクにDHバーを付ければ解決、とはなりません。
ハンドルを手で握った体勢に最適化されてるのがロードバイクです。
シートアングルが72~74度くらいに設計されています。
[シートアングル]
まずは、標準的なロードバイクのポジションがこれです。↓
好みはあるでしょうが、
体の軸に対し、腕の角度(a)と、(ペダル下死点での)脚の角度(b)を
それぞれ90度にすると、安定したラクな体勢になります。
では、ロードバイクのフレームでDHバーを使うとどうなるでしょう。
こんな感じです。↓
DHバーのアームレスト(肘乗せ)に肘を乗せた体勢は、
ドロップハンドルの下を持った姿勢よりも低くなります。
体と脚の角度(b)が鋭角になりますね。
これがロードバイクにDHバーを使った時に窮屈と感じる原因です。
前屈した体勢となり、
ペダリングはもも上げみたいな状態になるのです。
さらに、体と腕の角度(a)が鈍角になるので、
体重をしっかり支えられない状態になり、
不安定となります。
これを是正する(a、bを90度に近づける)ためには、
サドルを前に送るか、DHバーの位置を上げるしかありません。
しかし、シートアングルが72~74度に作られた
ロードバイクのフレームではサドルを前に送ったとしても
適正な所まで持って行けないことが多いのです。
また、DHバーの位置を上げてしまったら、
起き上がった体勢になり、空気抵抗が増えて本末転倒です。
これがTTポジションにおけるロードバイクの限界です。
ですが・・・
本末転倒ではあるのですが・・・
Nさんのように、深い体勢に息苦しさを感じているのであれば、
エアロ効果は少なくなったとしても、
DHバーの位置を上げるべきでしょう。
苦しさを我慢してやるのは良くありません。
または、DHバーをあきらめて、
下ハンドル握って走った方がエアロかもしれません。
そこでTTバイク
TT(タイムトライアル用)バイクは深い前傾姿勢を取ることを前提として設計されています。
最近ではTTバイクの中でも細分化され、
トライアスロン専用モデルというのも各社から出ています。
TTバイクはシートアングルが75~80度で設計されています。
そうすることで、ロードバイクに比べて
サドルを前に送ることができますし、
より低い体勢で乗ることができるのです。
こんな感じです↓
前傾でありながら、
a角、b角ともに90度に保つことができ
安定した体勢で乗ることができます。
ロードもTTも実は同じ体勢
ロードも、TTバイクも、
体の軸に対する腕と脚の角度(a、b)が90度だと安定した姿勢を保てるのは同じなのです。
見た目からすると、
ロードバイクはラクな体勢、TTバイクはキツい体勢、
というイメージを持ってしまうかもしれませんが、
実は同じなんですね。
ロードとTTのポジションを並べてみました↓
これ、同じ体勢なんです。
ロードのポジションからBB(ボトムブラケット)を中心にして、
前方へ回転させたのがTTバイクのポジションです。
ポイントは前方へ水平移動ではなくBB中心に回転、です。
水平移動だと、a角、b角が変わってしまいます。
[参考:BBはここです↓]
つまり、ロードできちんとポジションが出ていれば、
体の傾きが変わるけど、
基本的に同じ体勢で乗ることができるので
見た目ほど辛く感じないということです。
ただし、体勢の回転に伴い、ペダルへの入力のポイントが多少変わります。
それは、実際に乗って慣れていくしかありません。
では、やはりトライアスロンはTTバイクじゃなきゃダメなのか
トライアスロンは単独で走り続けるという競技の特性上、
TTバイクが圧倒的に有利になります。
もし、金銭的な余裕があるなら、TTバイクを購入することをお勧めします。
しかし、バイク1台、何十万、ヘタすると百万、二百万の世界です。
競技に対する考え方や、価値観は人それぞれですので、
ロードバイクでトライアスロンに参加するのも、全然有りだと思います。
また、トライアスロン以外のサイクルイベントでは
TTバイクの使用が禁止されていることも多いので、
トライアスロンだけのためにTTバイク買うのはちょっと・・・
という人もいらっしゃると思います。
その場合は、今使っているロードバイクで、
可能な限り、エアロで且つ、ラクに乗れるポジションを模索してください。
また、新たにロードバイクを購入するのであれば、
各メーカーから発表されてる、フレームの設計図(ジオメトリ)を見て、
なるべくシートアングルの立っているモデルを探すなど、
ロードにもトライアスロンにも使えるバイクをチョイスしてください。
シートポストを前後ひっくり返して使えるモデルなら、
いろんな用途に使えますね。
例、シーポ「MAMBA(マンバ)」
→http://ceepo.jp/index.php?mamba-sti
ショートのドラフティングレースならロード一択
もし、ショートディスタンス(オリンピックディスタンス・スタンダードディスタンス)で
エリート部門や、日本選手権や、その予選参加を考えているなら、
上述してきたTTバイクは使えません。
JTU競技規則の車両規定に従うこととなります。
ドラフティングレースではドロップハンドル必須です。(第82条)
[JTU競技規則から抜粋]
DHバーの位置や形状も規定されています。
TTバイクでこの規則に沿ったセッティングをすることは
事実上不可能なので
もし、これらのレースを目指すのであれば
ロードバイク一択となるでしょう。
まとめ
トライアスロンと言っても、
その中で、競技の種類がいくつもありますし、、
人それぞれ、競技への向き合い方やベクトルが違うので
どのバイクが正解ということはありません。
大切なのは、競技を楽しむことですから、
あまり機材に固執するべきではないのかもしれません。
自分の持っている道具に愛着を持って大切に扱うことが一番でしょう。
ロードバイクでも、(おそらく)マウンテンバイクでも
トライアスロンを楽しむことは可能です。
その際は、楽しくラクに乗るためのポジショニングが必要となります。
この記事がその参考になれば嬉しいです。
今回は以上です!
はちゃの!
最近は腕と腰の90度という角度はあまり聞かなくなりましたがポジションを出すときの基本です。
私は、古いタイプのバイク乗りですので、ポジショニングマシンをつかって、機械的に決められるポジションよりも、
乗りながら、少しずつ決めていくやり方のほうが、個人的にしっくりきます。
人にも、「マシン使え」とはアドバイスしません。
理論上、理に適ったポジションよりも、感覚的にラクなポジションのほうが速く走れる、なんてのは良くあることですから。