こんにちは。
今日は女性ランナーAさん(30代・ランニング歴5ヶ月)から質問いただきました。
『ファスティングダイエットに興味があります。
「食べないダイエット」は筋肉が落ちるため体に悪いことは知っていますが、
ファスティングダイエットは最低限の栄養とカロリーを摂りながらやる方法です。
3日~5日の期間、「酵素ドリンク」だけを飲み続けます。
この方法だと筋肉が落ちずに代謝が上がり免疫力が高まり「痩せる」そうです。
アスリート的にはファスティングダイエットをどう思いますか?』
はい、ありがとうございます。
即答です。
やらないでください。
アスリート的にも一般人的にも
体に良くないでしょう。
理由は以下の通りです。
しかし、(いつもの逃げ口上ですが)私は栄養学や生物学の専門家ではないので、
あくまで私個人の意見として受け取っていただけたら幸いです。
素人なりの考察です。
ファスティングとは
ファスティング(ダイエット)は私も聞いたことがあります。
名前から、断食系だろうなぁという(fast=断食)だと想像もできます。
でも、詳しく知らないので、(簡単に)Google先生で調べてみました。
ファスティングで期待できる効果として、
●腸内環境改善
●デトックス(解毒)
●脂肪燃焼
●体内の酵素活性化
●免疫力向上
いろんなサイトがありますが、
だいたいどこも、こんな感じのことが書いてあります。
方法もいろいろですが、
準備期:
少量のお粥、野菜スープなどの準備食を2~3日
断食期:
酵素ドリンクと称する飲料と水やノンカフェインのハーブティなどを3~5日
(1日700キロカロリー程度、水分2リットル)
回復期:
消化の良い自然食品を少量ずつ2~3日
こんな感じですね。
そのほか、1~2日の短期間ファスティングというのもあり、
この場合は準備食と回復食は不要だそうです。
私がファスティングをオススメしない理由
結論から言うと、
結局、カロリー制限ダイエットだなぁ、って思いました。
1日700kmカロリーというと、
大人の標準必要カロリーの3分の1程です。
それを1週間程度続ければそりゃ体重落ちますよ。
腸内に残ってる食べた物が運固になって排出されるだけでも、
人によっては1kgくらいは減るでしょう。
そして、飢餓感を感じた体が脂肪を分解して、
ケトン体という物質を作り出すことにより
エネルギーとして利用する反応が起こります。
これは、糖質制限ダイエットと同じ理屈ですね。
こういうダイエットは苦しさを伴いますので、
終了後によほどの意志の強さがないとリバウンドしやすいですよ。
リバウンドを繰り返す度に痩せにくい体質になっていきます。
腸内環境改善ということついて
まず思うのが、良い腸内環境ってどんな状態?ってことです。
ファスティングの考えで言えば腸の中を空っぽに近い状態にして、
活動を弱めるのが環境改善ということなのでしょうが、
一方で、ヨーグルト、チーズ、キムチなどの乳酸菌食品をたべて
腸内環境改善と謳う場合もあるし、
食物繊維を多く摂ることが腸内環境改善だとする考えもあります。
食物繊維は消化しにくいから腸が頑張って働いて
排便に良好に作用するということなので、
腸の活動を弱めるのとは真逆の考えです。
したがって、
腸が空っぽ=良い環境
とは一概に言えないと思うのです。
デトックスということについて
ファスティングをすると、
デトックス効果があるとされています。
デトックスとは
detoxification(解毒)の略語です。
つまり、ファスティングには
体内に蓄積された毒素を排出または解毒する作用があるとのことです。
しかし、「体内に蓄積された毒素」って何でしょう。
すごく曖昧な表現ですね。
人体には、肝臓・腎臓などの働きで有害物質を排出する機能が備わっています。
これはファスティングをしているしていないにかかわらず
常に行われている生体活動です。
この生体活動とデトックスとの違いが明確ではありません。
[参考]
明治大学科学コミュニケーション研究所
→https://gijika.com/rate/am_detox.html
イギリス国民保健サービスは、
「『医療以外の分野における「デトックス」に科学根拠はなく、むしろ一部の製品は健康を損なう可能性があり有害である』」
としています(2009年)。
[参考]
フリー百科事典・ウィキペディア(Wikipedia)「デトックス」
→https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%87%E3%83%88%E3%83%83%E3%82%AF%E3%82%B9
脂肪燃焼ということについて
人間は何もしていなくても1時間に50キロカロリー程度消費します。
基礎代謝というやつです。個人差があります。
50×24時間=1200キロカリー。
日中は活動するので、さらに消費カロリーが増えますので
だいたいの目安として、1日につき
女性で2000キロカロリー、男性で2500キロカロリー程度の摂取が必要と言われます。
ファスティングは「酵素ドリンク」というもので
約700キロカロリー/日しか摂取しません。
必要摂取カロリーの3分の1程度です。
人間が体内にグリコーゲンとして蓄えられるエネルギーは
1800~2000キロカロリーですので、
ファスティングを始めるとすぐに貯蔵エネルギーが枯渇します。
その時に起こるのが上でも少し触れたケトン体生成です。
簡単に言うと、「飢餓=生命の危機」を感じた体が
一気に体脂肪燃焼モードに移行するのです。
脂肪から作り出したケトン体をエネルギーにします。
ケトーシス状態と言います。
ただし、同時に体は筋肉も分解する作用も働くので
筋肉量が減ります。
この点からして、アスリートには好ましくありません。
ならば、タンパク質の摂取量を増やせば良いのでは?
ということになるのですが、
ケトン体が増えている時にタンパク質を多く摂取すべきという意見と、
あまり摂取すべきではないという意見があるようです。
素人が簡単に判断しないほうが良いでしょう。
したがって、ケトン体ダイエットそのものを
やめておいたほうが無難だと思います。
[参考]
Women’s Health ケトジェニックダイエットの大きな5つの誤解
→→https://womenshealth-jp.com/a-keto-diet-20180305/
医師が教える!健康的に痩せる糖質制限ダイエット「4つのルール」
→https://gendai.ismedia.jp/articles/-/48023
酵素ドリンクについて
ファスティングでは、栄養摂取を
「酵素ドリンク」に限定する手法が多いです。
「ファスティング 酵素ドリンク」などで検索すれば
たくさん出てきますが、
主に、M酵素ドリンク、K酵素ドリンク、Y酵素ドリンクあたりがメジャーなようです。
AmazonのM酵素ドリンクのページから、
表示成分を抜粋します。
原材料:糖類(オリゴ糖・黒糖・蔗糖)野草類(アカザ・アカメガシワ・アマチャヅル・イチョウの葉・ウコギ・ウコン・エゾウコギ・エビスグサ・オオバコの葉・オトギリソウ・カキオドオシ・カワラケツメイ・カンゾウ・キダチアロエ・クコの葉・クコの実・クマザサ・ケイヒ・コナラ・スイカヅラ・スギナ・タンポポ・ツチアケビ・ツユクサ・ツルナ・ドクダミ・ナルコユリ・ナンテンの葉・ハトムギ・ハブソウ・マタタビの木・マツ葉・ヨモギ)野菜類(カブ・キャベツ・キュウリ・ゴボウ・小松菜・椎茸・大根・玉ネギ・トマト・ナタ豆・ニラ・人参・ニンニク・パセリ・馬鈴薯・ブロッコリー・ホウレン草・舞茸・モヤシ・山イモ・レンコン) 果物類(パパイヤ・パイナップル・リンゴ・レモン)その他(貝化石・昆布)塩化マグネシウム(海水由来)MSM、Lカルニチン・原材料の一部に山イモ、リンゴを含みます
どれが酵素なのか分かりません。
野菜やフルーツがほとんどですね。
タンパク質は少なそうです。
貝化石って何だろう・・・
で、Mドリンクの製造元のサイトには要約すると次のようなことが書いてありました。
●自生する野草、パパイヤなど酵素を多く含む素材を選んだ。
●マグネシウム・カルニチン・MSMなどカラダが喜ぶ有用成分を豊富に含む。
●果実、野菜、ハーブの良いところを発酵熟成で引き出した。
●約50種の乳酸菌と酵母の共生で生まれ、果実ジュースを混ぜずに酵素液100%にこだわった。
まず、基本的な事として・・・
根本的に、酵素とは何かというと、
「生物の細胞の中で作られる、触媒作用のあるたんぱく質性の物質」
です。中学校で習いました。
酵素それ自体は変化せず、他の物質の化学変化を助ける役目をし、
1つの酵素に1つの働きしかありません。
つまり、酵素は、必要な分だけ体の中で作られますので、
食品として、口から食べても無意味です。
体内にもともと存在する消化酵素の働きにより消化されます。
もちろん、野菜やフルーツの中にも酵素は存在します。
上の「自生する野菜やパパイヤ」でなくとも生物や植物には
酵素は多数存在します。
しかし、それを食べたからと言って、それらの酵素が人体で働くことはないでしょう。
そして、「果実・ハーブ・野菜を発酵熟成」とありますが、
発酵と酵素は、意味がぜんぜん違います。
発酵したら、酵素が増えるとか、質が良くなるとか、あり得ません。
そして
「乳酸菌と酵母の共生で生まれ、果実ジュースを混ぜない酵素液100%に」
乳酸菌と酵母を混ぜると酵素液になる?
そもそも酵素液の定義は?
って疑問符が盛りだくさんになります。
整理すると
酵素:触媒として働くタンパク質。生物の細胞内で作られる。様々な化学反応を起こさせ、物質合成や分解を行う。
発酵:微生物による物質の化学反応(=酵素反応)を利用して、食品中の成分を別のものに変えること。
酵母:微生物の一種。アルコール発酵やパンの発酵などに利用される生物。
です。同じ「酵」の字がありますが、意味合いが違います。
酵素ドリンクを無理矢理解釈するなら、
野菜や果実をに酵母を混ぜて、酵母の持つ酵素の働きにより発酵させたドリンク。
略して「酵素ドリンク」
ということでしょうか。
[参考]
うさうさメモ「酵素を食べて健康になれる?酵素健康法と酵素栄養学」
→http://d.hatena.ne.jp/usausa1975/20140120/p1
食べた酵素は働いてくれるのか?
→https://yoshibero.at.webry.info/201206/article_10.html
国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所のサイトの研究食品情報のデータベースでは
酵素について、
●食品製造の過程での酵素の作用と経口摂取した際の体内での作用を混同している
●酵素の作用が強くなることが体にとって必ずしも良いこととは限らない
としています。
→https://hfnet.nibiohn.go.jp/contents/indiv.html#Jw02
免疫力向上について
断食によって免疫力向上が狙えるというのは
あながち間違った情報ではないかもしれません。
南カリフォルニア大学の研究によれば
断食により、免疫系の生成に関わる造血幹細胞が活性化し、
新しい白血球が生まれ、免疫系が再生することがわかったそうです。
[参考]
J-castニュース「断食は究極のアンチエイジング! 半年に一度、2~4日間で免疫系が再生」
→https://www.j-cast.com/2014/08/23213449.html
ただし、記事では
まだ動物実験の段階であることとし、
確証が得られれば、
疫力が低下した高齢者や、がん治療などの化学療法を受けている人にとって福音となる。
と結んでいます。
病気治療の目的などで利用される行為で、
素人判断で下手な断食をするべきではないと思います。
ものは試し、実際にやってみた
質問されたことに対して、
イメージだけで答えるのは無責任だと思い、
実際にファスティングをやってみました。
とあるサイト情報で、
1日~2日のファスティングなら準備食や回復食は不要とされてたので、
ちょっと試してみようかと。
ただし、酵素ドリンクなるものは飲みません。
ただの発酵飲料でしかないので。
個人的な見解として、
ファスティングは単なるカロリー制限ダイエットなので、
酵素ドリンクでなく、700キロカロリー程度のドリンクで代替可能だと思います。
私が飲んだ物の内容は
オリーブオイルとハチミツをそれぞれ大さじ1杯入れたノンカフェインのジャスミンティ。
(すげーマズいよ)
1杯で約170キロカロリーです。
これを朝昼晩と3回飲みます。
170×3=510キロカロリーです。
捕食として、ホエイプロテイン粉末を25グラムずつ
水に溶かして2回飲みます。
1回約120キロカロリー×2=240キロカロリー。
トータル約750キロカリーです。
補助的にマルチビタミンのサプリを1日分の規定量飲み、
塩分摂取のため梅干しを朝晩1つずつ食べました。
また、水は常にちびちび飲むようにし、
ジャスミンティと合わせて2リットル以上は飲みました。
1日目は順調でした。
多少の空腹感はあるものの、
普通に過ごすことができました。
しかし、2日目は朝からは空腹に加え、
ズキズキとした頭痛になりました。
しだいにひどくなり、軽い吐き気も出てきました。
何も手に付かなくなります。
ネットで調べると、
それは「好転反応」だと書いてありました。
ファスティングをすると、
頭痛や吐き気、めまい、吹き出物、舌苔などが急に出るのは普通のことで、
それは、体質が改善に向かう兆し、「好転反応」とされているようです。
んなわけあるかぁ!
あまりにも体調がおかしいので
実験的ファスティングは1日半で終了です。
普通の食事を摂ったら治りました。
たぶん低血糖による頭痛だと思いますが、
こんなものを好転反応っておかしいと思いますよ。
そもそも、医学用語に好転反応なんて言葉ないらしいです。
[参考]
東洋経済オンライン『 「トンデモ」な健康情報には見分け方がある 出てきたら「怪しい」と疑うべき言葉はこれだ』
→https://toyokeizai.net/articles/-/156509?page=2
良く考えてみてください。
お医者さんからもらった薬飲んでいて、
頭痛がひどくなったり、吐き気がしたり、
吹き出物が出てきたりしたとして、
お医者さんが
「それは好転反応です。良くなる兆しなので飲み続けてください。」
って言わないでしょう。
副作用が出たということで飲用中止ですよね。
都合の悪い事象をを隠す便利な言葉として
「好転反応」が使われている可能性が大いにありますね。
[参考]
Wedge Infinity 『「健康食品では病気は治らない、好転反応もない」消費者庁が断言!』
→http://wedge.ismedia.jp/articles/-/10760
まとめ
●ファスティングは、何のことはない、カロリー制限ダイエット。
●カロリー制限ダイエットは、よほどの精神力がない限り、高確率でリバウンドする。
●腸内環境改善の定義がよくわからない。
●デトックスの定義が曖昧。明治大学は疑似科学と判定。イギリス国民保健サービスはも否定。
●酵素は経口摂取しても意味がなく、体内の酵素が活性化したりしない。
●酵素ドリンクは何が「酵素」なのかよく分からない。
●断食による免疫力向上が見込めるという南カリフォルニア大学研究結果もある。
●ファスティング中に起こる体調悪化を「好転反応」といってごまかしてるフシがある。
最後に
ファスティングをたった1日半だけど、やってみた感想は
「こんな苦しいこと1週間も続けるなら
毎日ジョギングしてるほうが100倍楽しい」
でした。
そもそも、あの苦しさに耐える精神力があれば、
普通に普段から摂生して痩せられますよ。
質問をいただいたAさんはランニングを始めて5ヶ月ということで、
もしかしたら、停滞期、というか、
思ったほど体が絞れないなどの不安を感じているかもしれません。
しかし、ジャンクフードや暴飲暴食を避けて、
毎日、コツコツと走り続ければ、
必ずシェイプアップできます。
巷で流行するダイエット法のほとんどは
もとをたどれば商業主義的発想に基づいています。
要は金儲けなんです。
健康的に痩せるには筋肉の維持が必須なんですが、
運動しないダイエット方法で筋肉を維持することは無理です。
ファスティングも筋肉を落とさないで痩せるという触れ込みかもしれませんが
おそらく落ちると思います。
酵素ドリンクの成分表をみても、
筋肉維持に必要なだけのタンパク質を確保できるとは思えません。
酵素ドリンクは一般的な物でも高価で約3日分で20,000円程度かかります。
どんな効果があるか分からないのにそんな高額支払うのはもったいないです。
(効果が分からないのに高価ww)
だって普通の食事をして毎日の適度な運動習慣で痩せるんですからね。
そのお金で、お洒落なウェアやシューズを買って、
外へ出て散歩や軽いジョギングでもしましょう。
そのほうが楽しいです。
ダイエットもスポーツも、苦しまずに楽しくやるもんです。
今回は以上です!
はちゃの!