※フィクションです。
田舎で代々続く職人の家があったとする。
例えば、そう、染め物屋。
江戸時代から続くこの染め物屋、主人は高齢となり隠居し、その息子が後を継いでいる。
一人前の染め物職人になるには何年も修行しなくてはならない。
跡取りの若は、何年も努力して修行し技術を修めたので腕は確かである。
しかし、この職人の家計、人が良いのか、何も考えていないのか、商売っ気がまるでない。
昔は放っておいても客は向こうからやってくる時代があった。
しかし、近頃は安い海外製品に押されて、客は減り、家計は外で働いている妻の収入に頼らざるを得ない。
しかも、自分の作った商品に定価もなく、客の言い値で売るようなお人好しだ。
それでも、高齢の隠居も、若も、どうも危機感がないようだ。
見かねた妻が言う。
「良いものだけ作っていれば向こうから客が来る時代じゃない。こちらから打って出るアイデアを出さないと、生き残れずに廃業になる。」
妻がアイデアを出し提案する。
●ホームページを作る
●複数のSNSを通じて商品を宣伝・拡散する。
●通販
●名刺・年賀状・フライヤー
●物産展
●海外へ和製品の販促
●デジタル画像のプリント技術の導入
●スポーツユニフォームなどのデザイン、作成
●染め物体験教室やセミナーの開催
などなどなど。
今や、デジタル技術の導入と全国通販は必須だ。
しかし、隠居も若もまるで人ごとのように考えてる。
「うちにこれはむり。」
「同業者からの目が」
まるでやる気がない。
しまいには「お前やってくれよ」と、フルタイムで働いている妻に押しつける始末。
さらに、タチの悪いことに、隠居も若も、現在中学生の息子に跡を継がせる気でいる。
「あれは嫌だ、これは無理、でも何とかなるでしょ、何とかしてくれるでしょ。」の依存思考。
「こんなお先真っ暗な商売継がせるために、子供を学校に通わせてるんじゃないのよ。子供に継がせたいなら基板を作っておくのがあんた達の役目でしょう!」
自分が外で働いて稼いだお金が、こんな将来に希望のない家業を養うために使われていることに嫌気が指した妻は、程なくして家を出て行った。
教訓
●些細なアイデアでも検討する価値はある。全て出し切ってから取捨選択する。
●やる前から無理と言ってシャッターを下ろさない。やるためにどうしたらよいか考える。
●最低限のデジタルの知識は、もはや一般常識化している。無知な老人にならないように、逃げずに勉強する。
●同業者の目は関係ない。大切なのは顧客の気持ち。
●今は昭和ではないことを認識する。
●1年先、5年先、10年先のことを考えて商売をする。
●「いつまでもあると思うな妻と金」