先日の佐渡国際トライアスロン大会(Bタイプ)に出場しました。

今回はTTバイクではなく、ロードバイクで参加しました。
昔から、まことしやかに囁かれてきた、
佐渡はロードバイクにDHバーが一番速い」という伝説が本当なのかを
実際に確かめてみようと思ったからです。

今回のこの試みは、個人的な主観、感覚に基づくもので、
科学的な根拠や数値に基づくものではないことをあらかじめ申し述べておきます。
「タラレバ」の記述もありますので、参考程度にご覧ください。

ドロップハンドルとDHバーの相性が良くない

使用したバイクはCEEPO(シーポ)のStinger(スティンガー)です。


 
ダウンチューブは最近流行りのカムテール形状。
カムテール形状は翼断面形状に迫るエアロ効果ということで、
最近各ブランドが採用してきています。
フロントフォークとシートステーは長方形に近い楕円断面で
とくにエアロ形状ではないようです。

シートポストをひっくり返して、
通常のロード的なポジションよりも若干前乗りにセットしました。
そうしないと、DHバーを握るポジションが出せません。
それでも、TTバイクほど思い切った前乗りには出来ません。
前乗りにしすぎると今度はドロップハンドルを握るポジションが
窮屈になります。
DHポジションとドロップハンドルの両立は難しいです。

BタイプはTTバイクなら3時間5分~10分

私の所有するTTバイクは、
同じシーポブランドのVENOM(ヴェノム)、

それと、Cervelo(サーベロ)のP5です。

この2台は、過去何度か佐渡Bを走っています。
これらのバイクであれば3時間5分~10分程度を目安に
レースを組み立てるところです。
ロードバイクは巡航性能では不利なのは分かっています。
佐渡特有の小さなアップダウンが連続する区間と、
終盤の峠区間での優位性を生かして、
どれだけ走れるのかを実験します。
 

実験1 序盤の平地区間

佐渡Bのバイクコースは108kmです。
これをコースの特性から大きく3つに分けることが出来ます。

まず序盤。
序盤の20km程度は佐渡中央部(国中平野)を通過するフラット区間です。
この区間は比較的ラクに、高速で巡航できる区間なので
スイムの疲れを取り、落ち着いて補給食などを食べます。
しかしながら、周りの選手において行かれないように、
ある程度駆け引きも必要です。
まずここで感じたのが、TTバイクとの巡航性の差です。
向かい風がなければ時速40km以上で走れる区間なのですが
今回はかなり苦しかったです。
「TTバイクなら40kmは出てるなー」という努力感で35~36kmくらいでしょうか。
辛いので、ギア軽くしてケイデンス高くし、なんとかスピードを維持しますが
後から追いついてくるTTバイク勢にどんどん追い抜かれました。 
巡航性能で負けるのは分かっていましたが、
だからといって、この序盤で置いて行かれるのはよろしくないので、
なんとか食い下がり、付いていきました。
結果的に、序盤で予想外に脚を使うこととなりました。

実験2 中盤のやや起伏のある区間

中盤は高低差15m~40mくらいの小さな起伏の続く区間です。
ようやく、この辺りからロードバイクの優位性が出てくるはずです。
ここからが勝負、と思い走りましたが、
この区間でもTTバイクの勢いは止まりませんでした。

短い登りなど、TTバイクはものともしません。
勢いで登れてしまうんですね。

それに、この辺から、
佐渡トライアスロンあるある集団が形成され始めます。
大前提としてドラフティングは違反行為ですが、
アップダウンの連続でバイク同士の間隔が詰まり、
どうしても集団が出来てしまうのかな、と感じます。
(それでも違反は違反です)
今回も5~10台くらいの小集団がいくつも形成され、
起伏をクリアしていきます。

さらに、これも佐渡トライアスロンあるある
小佐渡の向かい風が追い打ちをかけます。
今年は例年にも増して強い向かい風で、
漕いでも漕いでもスピードが上がりません。

そんな中でも速度を維持して走り去るTTバイク集団です。
「TTバイクの集団、無敵だな・・・」
そう感じながら、私も頑張るのですが、
付いていこうという気も失せるほどの速度差でした。
前後を見渡すと、
私と同じように苦労しているロードバイク勢がちらほら。
全日本選手権の女子選手たちが皆ロードバイクで苦しそうにしていました。
 

実験3 終盤の山岳区間

80km地点あたりから、名物の小木の峠越え区間が始まります。
ようやくロードバイクの真骨頂、という区間です。
しかし・・時既に遅し、でした。
勝負は序盤~中盤で付いてしまっていました。
上位のTTバイク勢は遙か彼方先を行っています。
確かに、ロードバイクは登り坂には強いです。
強いですが、小木の峠は、言っても高低差140m、距離も8km程度の区間です。
多少、速く登れたところで焼け石に水でした。
 
ここまで差を付けられると、あきらめ感が強く、
使いすぎてしまった脚を少しでも休めて、
ランに繋ぐことに徹しました。
 

まとめ

今回のバイクラップは3時間24分、
2015年にP5で走ったラップが3時間4分。
ベノムでは2008年に3時間11分。

様々な条件が異なるので
単純に比較するわけにも行かないのでしょうが
今回は特に体調が悪いわけでもなく、
練習不足というわけでもない中での3時間24分でした。
2015年よりも20分も遅い結果でした。
更に、脚を使いすぎて、ランラップが想定よりも5分ほど遅かったの含めると、
目論見よりも25分近くの遅れとなりました。

もちろん、「タラレバ」の話ですので、
TTで走ったからといって、
25分速くフィニッシュできたとは限りません。
年齢も重ねている訳ですしね。
 
ただ、やはり実感として、
多少のアップダウン区間で遅くなるからといっても、
総合的には
トライアスロンはTTバイクのほうが速い
(ショートのドラフティングレース除く)
という気持ちが強くなりました。

佐渡トライアスロンにおいて
「ロードバイクにDHバーが一番速い」
というのは過去の話であると感じます。

昔のTTバイクは重くて、
TTと言ってもワイヤー類がむき出しだったりして、
空力性能もあまり良くありませんでした。
しかし、最近のTTバイクは軽量になり、
空力性能も格段にアップしています。

重量が軽いなら空力性能に優れていた方が良いのは当たり前です。
登りが苦手と言っても、
トライアスロンの登り坂なんてたかがしれています。
ヒルクライムレースでもない限り、
少しくらい坂が遅かったとしても平地区間のアドバンテージで
たっぷりおつりが来ます。
それに、コンパクトクランクや、スプロケで30tを使うなど、
セッティング次第で、TTバイクでも普通に坂を登れますよ。
今回はBタイプでしたが、Aタイプでも同様だと思います。
Aタイプも前半の山場はZ坂と大野亀くらいですので。

追記

今回は、ドロップハンドルにDHバーを付けて走ったわけですが、
TT用のエアロハンドルにDHバーを装着した場合、
つまり、ロードバイクのフレーム以外はTTバイクと同じ装備にした場合は
どのような結果になるでしょうか。
変速がDHバーで出来るようになり、
ドロップハンドルのポジションを考慮しなくても良くなるので、
TTバイクに近い前傾姿勢を取ることが可能となります。
ただし、この場合シーポのように、
前乗りポジションに対応したジオメトリのエアロロードフレームでなければなりません。

スティンガーをエアロハンドル化すれば実験可能ですが、
多分しないと思います。
ロングライド佐渡のように、
ドロップハンドルでないと参加できないイベントもありますし、
そこまでするなら、同じシーポのTTバイクであるヴェノム持ってますし。
 

追記2 TTバイクのススメ

前述のように、
最近のTTバイクの性能向上はめざましいものがあり、
中、長距離のトライアスロン競技において、
ロードバイクの長所がほとんどなくなったといっても過言ではありません。
フロントフォークや、シートステーを廃し、
空力性能と快適性を向上させる革新的なフレームも発表されています。

以前なら、入門用としてロードバイクを購入し、
慣れてから、2台目以降にTTバイクを購入するのが一般的でした。
しかし、これからは、トライアスロン参加を念頭に置いた場合、
1台目からTTバイクを購入するのもありかもしれませんね。

追記3 スペシャライズドの実験データ

スペシャライズドのエンジニアが行った実験データがあります。
 
元記事→How aero is aero?
https://www.bikeradar.com/road/gear/article/how-aero-is-aero-19273/
 
ロードバイクとTTバイクそれぞれの
40km/hで走行する際の出力をまとめたものです。
ロードバイクはTarmac SL2
TTバイクはTransitionです。

1の純然たるロードバイク&ノーマルなヘルメットはお話になりません。
2~4は大差ない感じです。
5は突出して良い数字ですね。
この実験では、まず大事なのが前面投影面積、
次いでヘルメットということが分かります。
今回私は、3の装備で佐渡を走りました。
データ上は3と5の出力の差は33ワット。
佐渡でも40km/h近辺のスピード域で走ります。
33ワットのハンデを背負って3時間以上走ったことになります。
データ上からもTTバイクは有利ということが分かります。

ロードバイクでも、深い前傾のポジションを取ることができて、
エアロヘルメットやエアロバーを装備すれば、
TTバイクに近い戦闘力を得ることが出来るのではないでしょうか。
 
 
関連記事
→佐渡国際トライアスロン・レース編【総合24位・年代別5位】 2018年9月1日~2日
→【トライアスロン】同じ重量ならロードバイクよりTTバイクが速いのは当然