野球をやっている中学生の息子さんをお持ちのお父さんから相談を受けました。

「息子さんの現在の体格は183㎝、60kg。
  野球選手としては細身のため、あと10kg増やしたい。
  どんな食事をすれば良いのか。」

現在やっていることは、毎食白米を1合から多いときで2合食べ、
プロテインや栄養サプリメントを常飲しているそうです。
理由は普通の食事では栄養摂取量が到底足りないだろうということで。
サプリメントだけで毎月5,000円ほどになるそうです。

まず、最初に断っておきますが、
トライアスロンの指導者資格はありますが、
私は野球の経験も指導歴もなく、
栄養学の専門家ではありません。
なので、
仮に自分の子供が野球をしているならこんなアドバイスをするよ、
程度のものだということを踏まえて聞いてください。

まず、体を大きくすることについて、
大きい体と言っても2種類あります。
1つは、筋肉量の多い引き締まった体、
もう1つは、脂肪量の多いブヨッとした体。
同じ体重の野球選手なら前者のほうが良いですね。
ならば体重増=筋肉量増ということを目指したい訳です。
そうした点から食事を考えた場合、
タンパク質含有量の高い食品をチョイスした方が良いと思います。
同じ1,000キロカリーを白米オンリーよりも
白米500キロカリー+卵、豆乳、チーズで500キロカロリーとか。
(白米にもタンパク質は含まれますが、
  同時に糖質も多く含まれます。糖質は過剰摂取で脂肪に変わりやすいです。)
さらに、ビタミン類ですがいくら育ち盛りだからといっても、
サプリメントに頼るのは最後の手段で、
やはり、緑黄色野菜やフルーツで摂りたいです。
白米を玄米に変えるのも良いですね。
また、疲労回復に効果があるビタミンB群を多く含んだ豚肉、
マルチビタミン&プロテインのサーモンもオススメです。
どんな栄養素も体内で複雑に化学変化を起こし、
相互に関係し合って吸収されますので、
単一品目でお腹をいっぱいするよりも
複数品目を摂る方が効率的でしょう。
お腹いっぱい≠栄養満点、ということです。

次に、トレーニングの内容です。
例えば、実業団やプロの野球選手は
体を大きくする為に、かなりの筋力トレーニングをしていると思われます。
野球をやっているばかりではだめで、
野球のスキル練習とは別に筋トレメニューに取り組む必要がありそうです。
しかし、まだ中学生ということを考えると
成長期が終わっていない可能性があり、
過度な筋トレは、私ならやらせません。
(理由は省きます。「成長軟骨、剥離骨折」などでググってください)
自重による体幹トレーニングや、サーキット練習など、
負荷になりすぎない強度で試してみると良いですかね。
ただ、学生であることを考えると、
練習時間は限られているため、
筋力トレーニングは最優先事項ではありません。

最後に、体質という観点から。
筋肉の組成には個人差があります。
(両親からの遺伝による)
速筋と遅筋の割合差ですね。
速筋の割合が多い人は、筋トレにより
いわゆるマッチョになりますが、
遅筋の割合が多い人は、
「細マッチョ」にはなれても、
大きな体のマッチョになるのは困難かもしれません。
スポーツ遺伝子検査キットなどを利用すれば
速筋と遅筋の割合や、適正のあるスポーツの種類などを知ることができます。
しかし、子供の意に反して、取り組むスポーツを
大人が誘導してしまう可能性もあるので、
よく考えて利用してください。


DNAEXERCISE エクササイズ遺伝子分析キット(口腔粘膜用)

まとめ。
私がいつも、いろんなところで言っていることですが、
アスリートには体質の差、成長速度の差があります。
十人十色です。
その中で、日本の教育制度においては
中学、高校、大学でそれぞれ独立して部活動をやるために、
例えば、中学、高校なら
正味で2年ちょいの短い期間で結果を出そうとします。
(新入部員の球拾いなどの期間や、3年生夏以降は引退するため正味に含みません)
個人個人の体質差、性格差、大器晩成型かどうかなどを考慮する指導者(顧問)は少ないのが現状です。
周りについて行けなかったらやめた、
怪我をしたらやめた、
辛さに耐えられなくて燃え尽きてやめた、
こういう生徒が出たら失敗指導です。
中学→高校→大学→社会人→生涯と
そのスポーツを続けられるように指導することが求められます。
練習内容などはもちろんですが、
体の成長のしかたも、個人差がありますので、
食事指導も、とにかく短期間で大きくするという事だけに固執すると
生物人間として弊害が出てくるような気がします。

乳糖不耐性、炭水化物不耐性、自覚のない食物アレルギーなどもあり、
選手個人も、自分で、○○を食べたときにパフォーマンスが上がった、とか
○○を食べると便がゆるい、とか
朝ご飯を食べ過ぎるとむしろ体が重くて動けない、とか
自分の体のことをデータ化して蓄積することが大切です。
「経験値を上げる」ということですが、
やはりこれにはある程度の年月がかかりますよね。